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TECHNOLOGY

■ 開発経緯: N20開発ストーリー(ヤシマ電気株式会社様サイトへ)
■ 技術解説1: なぜシングルBA(バランスドアマチャー)なのか?
■ 技術解説2: 形状と音響設計
■ 技術解説3: アコーステックエフクトBAと他社BAとの違い

【技術解説1】

■なぜシングルBA(バランスドアマチャー)なのか?

機械運動を行う位相

例えば下のような正弦波を共振周波数の違う音響変換器2台へ入力すると

振幅の一番大きい所の時間差が発生した波形が音響出力として各音響変換器から出力されます。

その音響出力は同じ時間軸でプラスマナスの加算、減算がされ音響出力を音として利用者は聞くわけです。

これを位相干渉と言います。

これが良いのか悪いのか?良いわけではありません。
なぜ複数の音響変換器を組み合わせると問題があるの?と言う疑問を持たれる方がいらっしゃると思いますが、それには訳があります。

位相干渉の問題

  1. fo(共振周波数、以後説明省略)、周波数特性が同一、電気信号を同一極性に印加した場合は位相干渉の問題はありません、単純に振動実行面積が2倍になっただけ。
  2. foが異なった場合、位相干渉の問題があります。

位相て何?

音響変換器を2台(変換器-1と変換器-2)組み込み、その変換器の振動板が上下の機械運動を行った時発生する空気中の密と疎を正弦波で表した例にて説明します。
時間軸は2x1/1000秒なので周波数は1秒間に500回の振幅(500Hz)の周波数です。また立て軸は空気中の密と疎の大きさを表しています。位相は時間軸上の信号位置を表現しています。

同じ位相の波形

上記1項で説明した内容を500Hzで機械運動を行った音響変換器2台分の音響出力波形を表しています。
出力波形の大きさは縦軸の数値をごらんになると分かるように2倍の出力になっています。

まったく逆の位相の波形

音響変換器2台分の音響出力波形がゼロになります。
これは極端な表現をしていますが、foが違う音響変換器を複数台使用すると必ず位相ずれの現象が発生します。

一般の方はオーディオシステムに使用されている3wayスピーカーはどうなっているのと言う疑問が湧き上がると思います。実はそのようなスピーカーでも位相ずれ現象が発生しています。

複数のスピーカーを使用したオーディオシステムは位相干渉による音響出力現象を少しでも緩和させるために、コンデンサーやコイル(インダクタンス)の電気的な性質を利用し位相干渉を減少(ネットワークを張ると表現している)させていますが完全ではありません、ましてや小さなイヤホンにその様な電気素子を入れること自体現時点では難しい状況にあります。

foが違う音響変換器を使用すると、なぜ位相干渉が起きるの?

音響変換器の振動板は機械運動を行います。電気信号に従って機械運動を行えると言う事は振動板が運動できるだけの柔らかさ(Compliance)が必要です。また運動する振動板は必ず重さを持っています。

図に振動板を機械系で等価した図と、その隣に電気的に等価した回路で一般的に表現されます。電気的に等価した表現は、力-電圧法、力-電流法と2種類ありますが、感覚的には「力-電圧法」のほうが説明しやすいので、それで行います。

振動板の柔らかさは電気的にC(コンデンサー)、重さはL(インダクタンス)、R(抵抗)運動抵抗として表現されます。
C、L、Rの周波数に対するキャラクターを理解する事により位相を理解できます。

Lz:(周波数に対する抵抗)周波数に比例し抵抗値が大きくなる
Cz:(周波数に対する抵抗)周波数に反比例し抵抗値が小さくなる
R:周波数に左右されず一定の抵抗値
このキャラクターの違う3つの素子の合成抵抗(インピーダンス)を複素数座標で表すと位相の角度が出てきます。

これは、共振前、共振、共振後のインピーダンスと位相角(θ)を表しています。

このように周波数変化で位相角(θ)変化がある事が分かります。
この位相角を音響変換器-1、-2を例に取り位相干渉を説明します。

〔条件設定〕
振動板の柔らかさ:音響変換器-1、-2と同じ
振動板運動抵抗:音響変換器-1、-2と同じ
振動板質量:音響変換器-2は-1の100倍の質量

  • ポイントAは音響変換器-2が共振した時の位相
  • ポイントBは音響変換器-2が共振した直後の位相
  • ポイントCは音響変換器-1が共振した時の位相

このように、foが違う音響変換器を複数台使用すると言う事は原音の電気信号とは違う波形が出力されます。
この例は単純に機械運動をしている振動板のみにスポットを当て位相干渉を示しましたが、これに音響回路がプラスされての位相干渉が発生します。

以前、簡易的な実験でfoの違う音響変換2台をイヤホンへ組み込み特性を取った略図です。

機械系ばかりではなく音響系も入り、丸部で大きく位相干渉が大きく入っています。
このようにfoの複数台音響変換器を複数台使用する場合は必ずこのような問題が発生します。

【技術解説2】

形状と音響設計

振動板前面

音響系設計でのイヤホンと一般的なスピーカーの一番大きな違いは、振動板前面にイヤーピースが有るか、無いか。一般的なスピーカーは振動板前面が直接自由空間です。カナル型イヤホンはイヤーピースを付けないと耳道には収まりません、そのイヤーピースを取り付ける構造上いかに広域周波数を鼓膜まで伝達させるか振動板前面の音響回路に大きく左右されます。

またイントラコンカ型イヤホン(イヤーピースが無く耳介に収めるタイプ)は耳道手前に音響変換機が配置される状態になります、カナル型イヤホン以上に、耳介の大小に音響特性が大きく左右されるため、音響系の設計においては問題が多くなってしまいます。

そのような中で、Acoustic effectは、構造上可能な限り音響的な設計値を基準に作成した結果、現在の形状(下図)になっています。

振動板背面

振動板

カナル型イヤホンは耳道を密閉し変換器の振動板と鼓膜で閉鎖された空間で振動板を機械運動させなくてはなりません。
密閉された空間で機械運動をさせるには振動板にある程度の剛性(Compliance(柔らかさ)の逆数Stiffness)が必要となります。もしこの剛性がない振動板をカナル型イヤホンに使用した場合どのようになるか。

振動板が鼓膜側へ運動した時、鼓膜と振動板間の空気密度が密になります。変換器の振動板はその圧力に耐えきれず変形してしまいます。 振動板が逆の運動を行った時(空気密度が疎)も同じ現象が発生します。
音響変換器は電気信号に対し忠実な機械運動が出来ません。このような現象を発生させないため、鼓膜の剛性(S) < 振動板の剛性(S)の条件が必要になります。従来のダイナミック型(動電型)音響変換器では構造上Acoustic effectが提供する振動板の剛性を得る事が出来ません。
このようにAcoustic effectは人間工学上、音響変換器の構造を吟味し設計しております。

下図は電磁型音響変換の力の関係を示したものです。
ここで運動に必要な柔からさ(Compliance)は振動板の復元力と磁石の吸引力の相反する力により作られるS-S’の角度(θ)で表現されます。使用する磁石の吸引力のカーブは一般的には距離の2乗に反比例すると言われていますが、実際に測定を行うと2乗に近いカーブですが磁石の性能によりそのカーブはさまざまです。
そのため、使用する磁石の吸引力カーブとそれに適した振動板復元力(S)を厚みで調整する必要があり、振動板の圧延率も指定しなくてはなりません。

最終的には磁気回路組立後1台ごとにその角度(θ)のバランス調整を行います。
以上の結果、他の音響変換器と比較し音源の電気信号に対し振動板の器械運動の追従性の良いことが次のグラフで確認することが出来ます。

ダイナミック型音響変換器(黒色:電気信号、赤色:音響変換機からの信号)

2次極B/A型音響変換器(黒色:電気信号、赤色:音響変換機からの信号)

1次極B/A(黒色:電気信号、赤色:音響変換機からの信号)

※B/Aはバランスドアマチュアを省略して記しています。
グラフの電気信号は8000Hzにて1.0msを音響変換機へ入力し音響変換機からの出力を同時に測定したものです。

評価:一見して分かるように、電気信号に対し音響出力の追従性はたの音響変換機と比べ全く違うことが分かります。また残音に対しても、他の変換機は時間を掛けながら不規則に変化し減衰しています。

以上のグラフで分かる様に、Acoustic effectの1磁極型B/Aは、他の音響変換器(ドライバー)と比較し音の立ち上がりが早く切れの良い高音質な音の再現が可能となっており、そしてそれらは科学的な検討を基に設計・製造を行なっています。

【技術解説3】

■アコースティックエフェクトBAと他社BAの違い

アコースティックエフェクトBAを試聴された方は既に感じていらっしゃると思いますが、同じBA1機なのにアコースティックエフェクトBAとは違う・・・。
この違いをご説明いたします。

他社BA

構造断面図

略電気的等価回路

注:振動板軽量の材質にてフリーエッジ構造をされているため、機械的要素は大半がアマチュアにあります。
Z:イヤホン筐体の音響系と装着された時の耳道を含むインピーダンスになります。

他社BAは小型を特徴としているため、音響変換器を収めている筐体により構成される音響系(CA1、CA2、MA1)の値を変更する事が出来ず、基本特性は固定された音響系を含めた機械系に全て左右される事になります。(音響系の操作により聞こえの音質改善がまったく出来ない構造となります)
その結果、機械系を若干変更する事で基本周波数特性を変えた変換器を複数組み込むことにより聞こえの改善を行う手法を取っています。
ところがそこには前回ご説明したように位相干渉という問題点も発生してきます。

アコーステッィクエフェクトBA

構造断面図:YSM-01/-03の場合

略電気的等価回路:YSM-01/-03

Z:イヤホン筐体の音響系と装着された時の耳道を含むインピーダンスになります。

アコースティックエフェクトBAは略電気的等価回路を比較して音響系の要素を多く取り入れています。
その理由は音の聞こえは、機械系だけで構成するのではないと言う基本概念にあります。 YSM-01/-03は高域音に対する音響インピーダンスを上げた構成にしている事により、中高域再生音に特化した特長を持たせています、これは他社BAで表現すると音響変換器を2機搭載した内容に相当します。当然機械系は一つだけなので位相干渉の問題はありません。
YSM-03(OFC)は音響変換器コイルの電気的特性も利用する事により聞こえの特徴を表現したもので、これは他社BAではないものです。

これとは別に、YSM-02/-04を略音響等価回路で表します。
略電気的等価回路:YSM-02/-04

音響系(MA3、CA4、MA4)を追加する事により低域音に対しては音響インピーダンスを下げ、高域に対しては音響インピーダンスが上がる音響回路構成をしています。 他社BAに例えると音響変換器3機を搭載した構造になります。
もちろん位相干渉の問題はありません、更に音響変換器のコイルには純銀線を採用する事により、純銀の電気的特を活かし他社には再現出来ない聞こえを再現しています。
そういう意味では音響変換器を3機以上搭載した内容に相当すると考えています。

TRY-01の音響系はYSMシリーズの土台となる音響回路を施しており、アコースティックエフェクトの音響設計の基本概念をアピールする商品として量販店限定で販売させて頂いています。
まだご試聴して頂いていない方でしたら、音とは「音響変換器の数だけではない」という違いを体験してみて下さい。

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